【Case4】相続税対策は何したらいいの?
こんにちわ。㈱石田興産の石田裕人です。
4月に入り、だんだん気温も上がってきて、花粉がつらい時期になりましたね。
前回は、「相続税はかかるの?」のテーマに際して、相続税の対象となるもの・基礎控除額・相続税の計算方法・相続税の納付時期について(※不動産の部分のみ)説明してきました。
今回は実際の対策の内容について説明していきたいと思います。
相続税がかかる不動産所有者の人がメインの話になりますが、顧客様の中でこの相続税対策として考えられる傾向としては、大きく2パターンあります。
1.相続税納付期限内に自己物件を売却し、納付する方法 ※不動産を所有している方のみ
2.土地・建物を所有し、借地権割合・借家権割合・債務控除の活用する方法
1.相続税納付期限内に自己物件を売却し、納付する方法に関していうと、不動産を沢山持たれている方に関してになるのですが、売却をしてその資金を元に相続税を納付する。これで相続税納付が完結できるので、このやり方も一つです。
不動産を所有している地主様や個人の方はこの考えを持たれている事が結構多いです。
ただしこのやり方をする中で、急な出来事で売りたくない不動産を売らざるを得なくなってしまったとか、思った以上に相続税の納付金額が高く銀行から借り入れて納付するとかそんなケースもあります。
そうなる前に、ポイントとしては、当初から売却する物件はどこでどのくらいの金額を見込めるか計画しておく事が大切になってきます。
そこで今回、解説していきたいのが、
2.土地・建物を所有し、借地権割合・借家権割合・債務控除の活用する方法
相続税を抑えるためには、不動産を活用し、評価額を適正に引き下げることが重要です。特に、借地権割合・借家権割合・債務控除を上手に活用すると、大幅な節税につながる可能性があります。今回それぞれの仕組みと効果的な活用方法について解説します。
~土地・建物所有と借地権割合・借家権割合・債務控除の活用~
1. 土地・建物の相続税評価とその引き下げ方法
相続税は、被相続人の財産を「相続税評価額」で算出します。現金や預貯金は額面通りの評価ですが、不動産は以下のように評価額を下げることが可能です。
(1)土地の評価方法
土地の評価には、「路線価方式」と「倍率方式」があります。
• 路線価方式:路線価(市場価格の70~80%程度)×土地面積
• 倍率方式:固定資産税評価額 × 一定の倍率
この2パターンで計算します。市街化調整地域(※用途地域が設定されていないエリア)ですと路線価がなく、路線価方式での計算方法ができない場合もあります。その際は、固定資産税台帳を参照しながら、倍率方式で計算します。
※路線価参考サイト
(2)建物の評価方法
建物は「固定資産税評価額」で評価されます。この固定資産税評価額というのは、当初建てた時の金額が評価になるわけではありません。これも固定資産税課税台帳の中の固定資産税評価額という項目があり、それを参考にします。これは市場価格の50~70%程度となるため、建物を活用することで相続税評価額を抑えられます。
2. 借地権・借家権を活用した評価額の引き下げ
(1)借地権の活用
借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有する権利です。借地権が設定されている土地(貸宅地)は、通常の土地よりも相続税評価額が低くなります。
簡単に説明すると
個人で所有している土地に他人が建物を建てて土地を他人に貸している場合、相続税評価額が下がる
という事です。
借地権の評価
借地権の相続税評価額は、次の計算式で求められます。
借地権の評価額 = 更地の評価額 × 借地権割合
借地権割合は地域ごとに異なりますが、30%~90%で設定されています。
貸宅地(地主側)の評価
地主が貸している土地(貸宅地)の評価額は、次の計算式で算出されます。
貸宅地の評価額 = 更地の評価額 ×(1-借地権割合)
例えば、1億円の土地で借地権割合が70%の場合、貸宅地の評価額は
1億円 ×(1-70%)= 3,000万円
となり、更地よりも大幅に評価額を引き下げられます。
(2)借家権の活用
借家権とは、賃貸住宅の借主が持つ権利です。賃貸物件を所有すると、「貸家評価減」と「貸家建付地評価減」を適用できるため、評価額を下げることができます。
貸家の評価
賃貸用の建物は、以下の計算で評価額が減額されます。
貸家の評価額 = 固定資産税評価額 ×(1-借家権割合)
借家権割合は通常30%とされているため、例えば固定資産税評価額が3,000万円の建物なら、
3,000万円 ×(1-30%)= 2,100万円
まで評価額を圧縮できます。
貸家建付地の評価
賃貸物件が建っている土地は「貸家建付地」として評価額が下がります。
貸家建付地の評価額 = 更地の評価額 ×(1-借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
例えば、更地の評価額が1億円、借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%の場合、
1億円 ×(1-60% × 30% × 100%) = 8,200万円
となり、土地の評価額を1,800万円引き下げられます。
3. 債務控除を活用した相続税対策
相続税は、被相続人が負っていた借金(債務)を控除して計算できます。
これを「債務控除」といい、ローンを活用することで相続税評価額をさらに抑えることが可能です。
(1)不動産ローンと債務控除
例えば、1億円の不動産をローンで購入し、5,000万円の債務が残っている場合、
相続税課税対象額 = 不動産の相続税評価額 - 債務
となるため、債務控除によって相続税負担を減らせます。
(2)債務控除を活用した節税戦略
1. 賃貸不動産をローンで購入
→ 借家権・貸家建付地評価減 × 債務控除で評価額を大幅に圧縮できる。
2. ローンを利用して資産圧縮
→ 現金をそのまま持つよりも、不動産を購入しローンを組む方が相続税対策として有効。
4. 相続税対策の成功ポイント
(1)不動産の組み合わせを工夫
• 更地を所有するよりも、貸宅地にする方が評価額を下げられる。
• 自宅だけでなく、賃貸物件を所有すると評価減のメリットが大きい。
(2)ローンを活用して債務控除を最大化
• 賃貸経営をローンで行うと、債務控除と評価減の両方のメリットが得られる。
• ただし、無理な借入れはリスクとなるため、返済計画を考慮することが重要。
(3)税制改正リスクに注意
• 相続税のルールは変更される可能性があるため、最新の情報をチェックし、税理士と相談することが重要。
■■まとめ■■
借地権・借家権を活用することで、不動産の評価額を下げることが可能です。
また、ローンを活用すれば、債務控除によってさらに相続税を圧縮できます。
ただし、無計画に不動産を購入するとリスクも伴うため、弊社や税理士といった専門家と相談しながら戦略的に相続対策を進めることが成功のカギとなります。
なので、不動産投資案件を購入する事だけが、有効的な対策にはなりません。現状の資産の状況を把握した中で、何をするべきか対策をしていく事が重要になります。
そのアシストをできる様に、弊社では一緒に考えながら対策を考えていきます。
相続税の負担を軽減するために、早めの準備を進めましょう。
次回は具体的な対策事例「駐車場契約・事業用借地権設定契約の比較と相続税効果」実例を元に相続税や収益的な観点から解説していきます。